数々のポーカー大会で優勝経験を持つ、日本を代表するプロポーカープレイヤー。
WSOP(World Series of Poker)にも参加した経験があり、その実績と卓越したスキルから国内外で高い評価を受けている。
現在はカジノ業界の企業に勤めており、初心者から中級者に向けてテキサスホールデムの戦略をレクチャーすることで、ポーカーの楽しさと奥深さを広めている。
ポーカーの大会に興味がある方であれば、一度は「ICM」という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。
ICMとは、トーナメントと切っても切り離せない関係であり、ポーカーにおいてMMTなどのトーナメント大会で勝つためにはICMは必須となります。
本記事では、ポーカーにおけるICMとは一体何なのか、そしてICMをどのように使えば勝率がアップするのか解説します。
ICMについて知りたい方や、トーナメントの大会で勝ちたい方は、参考にしてみて下さい。
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ポーカーのICMとは
ICMはポーカーの中でもトーナメントに特化したゲームに強い効力を発揮する戦略であり、今やトーナメント攻略には必須と言われています。
具体的にICMとは一体何なのか、基本から解説していきます。
ICMはトーナメントとキャッシュの違いから生まれた概念
ICMとは、「Independent Chip Model」を略した言い方であり、直訳すると「独立したチップのモデル」となります。
トーナメントではプレイヤーの手持ちのチップである「スタック」と「スタックの価値」は別物となるというのがICMの理論であり、トーナメントとキャッシュの違いによって生まれた概念です。
たとえば$100のスタックがあったとして、スタックだけの価値でいえば$100となります。
MMTを代表するようなトーナメント大会においては、スタックの価値は$100ではありません。
そこには賞金があり、そのスタックが賞金をもたらすためのキーになっているからです。
ICMとはトーナメントにおける独特の概念であり、普段のゲームと全く異なる意味を持つことを、理解する必要があります。
ICMはトーナメントを制するために必要な考え方
ICMは、MMTを代表するようなトーナメント大会での勝率を上げるための概念なので、いわばトーナメントを制するために必要な考え方ともいえます。
トーナメントでは、局面によって勝てる確率や分配される賞金が変化しますので、その時々によってキャッシュの価値が変化します。
実際に、どれくらいの価値があるのかと問い詰めていくと、賞金の配分方法やライバルのスタック量などによって数学的に計算する必要性が出てくるわけです。
ICMはいってしまえばツールですが、トーナメントの状況においてどのように期待値が変化していくのか、考えていく必要があります。
ICMは数学的に計算されたツールなので条件が複数ある
ICMは、賞金の分配方法となる「ペイアウトストラクチャー」や、トーナメントに実際に残っているプレイヤーのスタック量など条件によって吐き出される数値は様々です。
細かく条件を設定することにより、より正確な期待値が算出されるのがICMとなります。
しかし、数値化しにくい情報であるプレイヤーのスキルは、ICMにおいては考慮されていません。
他にも、ポジションやテーブルダイナミクスも考慮されていないことも、覚えておく必要があります。
つまり、ICMには一定の限界があり、ICMが考えられる範囲内で期待値を求めていくことになります。
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ICMのメリットとは
ICMの意味や概念について解説しましたので、次はICMを活用するメリットについて解説します。
トーナメント攻略にどのように作用するのか、何ができるのかをしっかりと理解していきましょう。
トーナメントにおける生存戦略に直結する
ICM戦略は、トーナメントにおける期待値を算出してくれるわけですから、生存戦略に直結することになります。
期待値がプラスであれば生き残れたり、賞金を得ることができたりする可能性が高くなりますし、期待値がマイナスであれば参加する意味がそもそもないということがわかります。
しっかりと期待値があるかどうかを見極めることができるため、常に自分の行動が正しいのかどうかを判断できる点では、非常に有用です。
ICMをマスターすればバブル対策になる
トーナメントの大会で賞金が得られない最上位の順位を、「バブル」と呼びます。
トーナメントにおいて最も避けなければいけない項目の一つに、バブルを掴まされないことが挙げられます。
ICMをマスターすることによって期待値がわかるため、「バブル対策」になるというわけです。
バブルは、精神的ダメージが大きく士気にも関わってきますので、ICMを活用してバブル対策を施すことはメンタル面においてもとても重要です。
ICMは数学的に導くので直感とは反する結果を出す
トーナメントにおいては、これまでの自分の経験や体験が活きやすいです。
なぜならば、トーナメントでは基本的にヘッズアップとなり、正しいとされる行動があまり結果に結びつかないからです。
但し、単に正しい行動が結果に左右されないからといって、自分の経験や体験が勝率を高めてくれるというわけではありません。
寧ろ、たとえ結果が結びにくかったとしても、正しい行動をとることで勝率を高めていくICMはとても有用です。
ICMは数学的に期待値を導いてくれるため、これまでの経験や体験による直感とは、反する結果を出すことが多いです。
ICMの結果も踏まえながら、冷静に自分の行動を決めていくことが、トーナメントでは求められます。
ICMの具体例(Sit And Goにおける3人戦の場合)
具体的にどのようにICMを活用するのか、「Sit And Go」を用いて開設します。
条件としては、以下とします。
- プレイヤー:3人
- バイイン(ゲーム参加費):$10
- レーキ:なし
- プライズ(全て):$30
- ペイアウトストラクチャー:1位$20、2位$10
それではまずゲームを始める直前での確認ですが、最初に1000チップ持っていたとする場合、スタックの価値は$10となります。
これはスタートした段階なので、条件の一つだと捉えることもできます。
それでは、ここからゲームを開始していきましょう。
最初のバンドで1人がフォールドして、残り2人がオールインをしたとします。
この時、1人が負けて除外され、残りは2人となります。
従って、チップは1人は2,000チップ、もう1人は1,000チップという状況になりました。
この状況におけるICMを計算してみましょう。
まず、1人除外された時点で、2人とも少なくとも2位のプライズ($10)は保証されています。
1位のプライズ(+$10)をスタック比である2:1で分配した時、それぞれ+$6.67と+$3.33の価値があることがわかります。
つまり、ICMによるこの時点でのスタックの価値は、以下となります。
- 1位:$10+$6.67=$16.67
- 2位:$10+$3.33=$13.33
- 3位:$0
これがICMが計算するスタックの価値となったわけですが、一つ注目すべき点があります。
先ほどのオールインで1,000チップを獲得した1位のプレイヤーは、ゲーム参加費として$10を失うリスクがあったにも関わらずプラス$6.67の期待値しか得られていないことが明らかになったことです。
つまり、得られるチップの価値よりも、失うチップの価値の方が大きいということがわかりました。
この具体例においては「トーナメントに参加しない方が良い」という結論に辿り着くことができます。
逆に、もし1位が得られる額が$20ではなく$30だったら、1位のスタックの価値は+$10を超えるのでプラスの期待値になっていたことでしょう。
このように、ICMによってトーナメントにおける期待値を計算することで、自分によって有利なのか不利なのかを見極めることができるのです。
ICMを活用する上での注意点
ICMは、ポーカーのトーナメントで特に効力を発揮する戦略ですが、当然ながら万能ではありません。
幾つかの注意点を考慮したうえで使わないと、なかなかICM戦略を活用しても勝率をアップさせることはできないのです。
ICMを活用する上での注意点をまとめましたので、注意して戦略を立てていきましょう。
ICMでは正しい判断や行動をすることが前提になる
ICM戦略をおこなううえで重要なこととして、正しい判断や行動がおこなわれることが前提となっている、ことが挙げられます。
つまり、ICMは前提を考慮して期待値を計算しているということです。
相手もそうですが、自分も同じで、何かしらミスが発生したり、想定外のプレイが発生したりすると、期待値計算の前提が崩れることになりますので注意が必要です。
ICMは全てのプレイヤーが同じスキルであることが前提
ICMを計算する上での重要な前提として、「全てのプレイヤーが同じスキルである」ことを挙げています。
バイインが極端に低いようなトーナメントでは、プレイヤーのスキル幅が大きく触れることになってしまうため、あまりICM戦略は有効になりません。
ICMは、全てのプレイヤースキルが同程度でないと、成り立ちにくいことを覚えておきましょう。
ICMではブラインドアップやポジションが想定されていない
ICMでは、プレイヤーの行動やスキルが考慮されていませんが、他にもブラインドアップやポジションが想定されていないのも注意すべきポイントです。
ブラインドアップは、プリフロップで支払う強制ベットです。
ブラインドアップは、ディーラーボタンの左隣2人が支払うという特殊ケースで発生するため、ICMの計算には組み込まれていません。
加えて、手数料のようなものなので、そこまで大きな額ではありません。
ICMを活用する際は、ブラインドアップやポジションを考慮していないことを前提にして、戦略を立てていく必要があります。
ICMのメリットや具体例の解説まとめ
ここまで、ポーカーにおけるICMのメリットや具体例について解説しました。
ICMについてまとめると、以下となります。
- ICMとはポーカーの主にトーナメントにおいて本領を発揮する戦略
- ICMはわかりづらい期待値を数学的に計算してくれるツールである
- 諸々の前提条件を加味しなければいけないので、実戦で使う場合は注意が必要
- ICMをマスターできればMMTなどの大会で有利になるので、非常に有用
ポーカーにおけるICM戦略は、トーナメントで勝ち抜いていくためには必要になる戦略なので、MMTなどの大会で活躍したいのであれば是非マスターしましょう。
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